The ☆ Scarlet

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目を輝かせるソフィ

2014年04月30日

パソコンで検索している人

デザイナーのソフィは目を輝かせる。
「今は、アクセサリーやカバンがメインかな。私もママと同じでやり手だけど、それほどデザインは得意じゃないから」
ちゃんと自己分析しているスカーレットに、キャンディは大笑いする。
「叔母さんと同じヘルプを、私たちに出したらいいじゃん!」
歯にもの着せない物言いに、ローラもソフィも、びっくりする。
が、スカーレットは不敵に笑う。
「・・・ったく、この子は昔から言いにくいことをズバリと言う子だね。でも、その通り。タニアのライブを見て、ピンときたの。私はビジネスを広げていける。そして、みんなは素材の意外性や、知識、そして他に類を見ないデザイン性を持ってる。タッグを組まない手はないじゃない?」

ローラは、店の奥にあるパソコンで、スカーレットのブランドを検索した。
その前に、女優スカーレットを検索して、三姉妹は、すっかり度肝を抜かれてしまったのだが。

スカーレットのブランドHPを見て、ローラとソフィは目を合わす。
「私たちにないものとあるものが、あるわね」
「だろ?ネームバリューに腰かけた、ちょっとしたブランドショップさ、今は」
ズバリ言い切るスカーレットが気持ちいい。
しかし、スカーレットのカーテン店にない、グローバルな解放感は、素晴らしかった。
「わかったわ、スカーレット、いくらでも、商品のリクエストをして。カーテン素材でできないものはないわ」
ソフィの言葉に、スカーレットはうなずく。
「そのつもりで、リスト作って来た」
分厚いリストを渡されて、ローラもソフィも、わくわくする。

スカーレットは、立ち上がると、店を見渡して言った。
「そのリストには、入ってないけど・・・そうだな、いい香りがしてきそうな色や素材のカーテンなんか、いろはの部屋に欲しいもんだね」

三姉妹は、顔を見合す。タニアの歌の世界観をカーテンで表現できたのだ。香りも表現できるはずだ。
ソフィは思わず立ち上がった。
「わかったわ、スカーレット。匂い立つようなカーテンね。作ってみせるわ」
スカーレットは振り返り、ソフィの手を握って、三人にウィンクした。  
タグ :カーテン


Posted by 弘せりえ at 15:05Comments(0)短編

スカーレットの新ビジネス

2014年03月29日

テーブル

遅い夕食が終わり、夜遅くなって、スカーレットは三姉妹に言った。
「もう一度、あの店見たいんだけど、明日じゃ、またお客さんでいっぱいだよね?」
ローラは残念そうにうなずく。
「そうね、月に一度の定休日は、二週間後だし」
「二週間もこんなとこでのんびりしれらんないよ」
ソフィは冗談っぽく提案する。
「今から、見に行く?」
いろはをアンジーに取られたキャンディは、大賛成する。
「行こうよ、スカーレット! 今日飾った花もまだ枯れてないよ!」

4人は、母たちといろはを残して、スカーレットのカーテン店に戻った。夜中の11時半。しんとした店の電気をつけるとカーテンの楽園が広がっていた。さすがのスカーレットもしばらく見入っている。
「ソフィ、これ、あんたがデザインしたドレス?」
ショーウィンドウに飾られたカーテンドレスの数々を見ながら、スカーレットがたずねる。
「ええ、ドレスもカバンも靴も、全部私のデザインで、ローラが生地を見繕ってくれて、キャンディが季節の花を飾ってくれるの」
ディスプレイの帽子やカバンに付けられた花を見て、スカーレットは思わず微笑む。
「キャンディ、いろはにも、なんかかわいいお花、あげてちょうだい」
キャンディはうなずく。
「ええ、とってもいい香りがする花にするわ。いろはには、香りが必要だもんね」
さっきの話をしっかり覚えていたキャンディに、スカーレットは感心する。そして、ローラの方を振り返った。
「この店のブレインは、きっとローラだよね」
ソフィもキャンディもうなずく。4人は、店の真ん中にある、お客さんの相談用テーブルについた。
「実は、私、今の彼氏と、ネットビジネスを始めたんだ」
スカーレットの言葉に、三姉妹はまたもや驚く。
「大学講師で、女優で、まだビジネスもするの?」
ソフィの問いに、スカーレットはうなずく。
「大学講師は、ばあさんになるまで続けるよ。でも女優業はそういうわけにもいかない。そしたら、退屈じゃん。で、今、女優として名が売れているうちに、そのネームバリューでビジネスを立ち上げた」
ローラは興味津々でたずねる。
「なんのビジネス?」
「スカーレット・プロデュースのブランド」
「へぇ、デザインもするんだ。何がメイン?」  


Posted by 弘せりえ at 17:17Comments(0)短編

世の中、ネット時代

2014年03月28日

世の中、ネット

アンジー母娘の、一触即発的な会話に、キャンディは舞い上がる。
「スカーレット、かっこいい~! 赤ちゃん、女の子?名前は?」
そんなキャンディに、スカーレットは破顔する。
「相変わらず、好奇心の固まりね、キャンディは」
スカーレットは赤ちゃんをキャンディに渡すと、キャンディはうれしそうに受け取ってだっこする。
「名前は、‘いろは’」
「いろは?」
「日本の言葉、‘色は匂えど、散るぬるを・・・’から付けたの」
「色が、匂う?」
「日本人は、そう表現したんだ。それに色気には匂いが必要だ、と監督からも言われた」
「はぁ?監督?」
キャンディの疑問に、スカーレットは、周りを見回して溜息をつく。
「・・・思ってた以上に洗練された店たけど・・・」
店内は相変わらず、お客さんでいっぱいだったが、どこか牧歌的で、スカーレットは肩をすくめる。
「・・・この国には、TVやネットはないの?」

閉店後、アンジーの家に皆がそろった。女ばかり7人。アンジー、ドロシー、ローラ、ソフィ、キャンディ、スカーレット、いろは。
「女系一族だね、まったく」
アンジーは、すでにほろ酔いでご機嫌だ。
「すごいおばあちゃんだね~」
キャンディはいろはをだっこしながら、アンジーを指さしていろはに耳打ちする。

スカーレットの話はこうだった。彼女は日本文化を勉強して特に花魁文化を極め、大学で講義をするほどになったらしい。が、彼女の美貌が話題となり、ある日、大手芸能事務所からスカウトされ、今や女優業もやっているという。先日世界的にヒットした日本映画にも、出ていたが、三姉妹を始め、誰も知らなかった。

「・・・ったく、それじゃ、これからの時代に乗り遅れるわよ。たまたま私がタニアのライブを見てたからよかったものの・・・」
ローラが驚く。
「え? タニアのライブを見てくれたの?」
スカーレットは、得意気にうなずく。
「世の中、ネット時代だからね。私はTVの中継で見たけど、その後、何回かネットでも見た。あんたたち、タニアに紹介されててびっくり!」
「スカーレットが日本で、私たちを見てたなんて・・・」
ソフィはうれしそうに微笑む。
「ローラも、ソフィも、その無欲な職人肌は、ある意味、いまでは貴重な存在だよ」
スカーレットの毒舌に、二人は苦笑する。
「・・・でも、タニアのステージは最高だったよ」
毒舌の合間に称賛を入れる語り口は、アンジーゆずりで、三姉妹は、くすくす笑う。  


Posted by 弘せりえ at 13:11Comments(0)短編

謎のオープンカー

2014年03月26日

オープンカー

スカーレットのカーテン店の前で白のオープン・カーが止まった。ハンドルを切っていたのは、黒のスカーフで髪を覆った女性。溢れ出した一束の金髪が額に波打っている。彼女が車から降りると、深紅の着物でデザインしたコートが目を引く。スカーレットその人だ。彼女は、助手席で小さく丸まったものを抱きかかえると、こちらを向いた。

店の中から、それを見ていたキャンディは、姉二人を大声で呼ぶ。
「ローラ、ソフィ!!大変!!!」
いつも騒いでいる末妹に、姉たちは、のんびりと振り返る。

スカーレットが、赤ん坊を抱いて、堂々と店の中に入って来たのは、その時だった。さすがのローラも、声が出ない。ソフィは、スカーレットの破天荒なルックスに驚く。キャンディは、その小さなものに声を上げる。
「ま、まさか、スカーレット・・・!?」
スカーレットは涼しげにうなずく。
「ご無沙汰、みんな。元気そうね。こちらは私のベイビー。よろしく」

ローラは、慌ててスカーレットの母でありこの店のオーナーであるアンジーに、ソフィは自分たち三姉妹の母であり、アンジーの妹にあたるドロシーに連絡した。

みんな揃ったところで、ドロシーは軽いめまいを感じて、姉のアンジーの肩に手を置いた。
「・・・アンジー姉さんが、スカーレットを抱いて帰ってきたときの、ママの気持ちがとってもわかるわ・・・」
二人の母、つまり三姉妹の祖母は、アンジーが未婚のままで連れて帰って来た小さなスカーレットを見て、しばらく寝込んだくらいである。

しかしスカーレットの母である、アンジーは、感心して娘を見る。
「我が娘ながら、あっぱれだ。父親は日本人かい?」
「ええ。別れちゃったけど。ママと同じでしょ」
「わたしへの当てつけかい?」
「まさか。ママは私の反面教師。でも自分の本能の赴くままに生きてるとこうなっちゃったわけ」  
タグ :カーテン


Posted by 弘せりえ at 11:53Comments(0)短編